頻度 よくみる
治療のポイント
・出血部位を同定し,基本は圧迫止血をする.
・気道の確保と循環動態の維持も忘れない.
・好発部位は鼻中隔前方のキーゼルバッハ部位である.
・高血圧,抗凝固薬の内服の有無も確認する.
◆病態と診断
A病態
・乾燥しやすい冬場に多い.
・原因が不明の特発性と,外傷や腫瘍などによる続発性(症候性)に分類される.
・出血部位は,外鼻孔から1~2cm程度奥の鼻中隔前方のキーゼルバッハ部位が最も多い.ほかの出血点としては,鼻腔後方外側の蝶口蓋動脈(顎動脈の分枝)由来,次に鼻腔前上方の前篩骨動脈(眼動脈の分枝)由来が多い.
・小児の鼻出血はほとんどがキーゼルバッハ部位である.
・抗凝固薬を内服中の鼻出血は止血しづらい.
・腫瘍由来の鼻出血では,出血する以前から片側性(出血と同側)の鼻閉を伴うことが多い.
B診断
・何をしていたとき(体位)に出血が始まり,前鼻孔に出始めたのか,咽頭に流れ落ち始めたのかを確認することで,出血点が鼻腔の前方なのか後方なのかを推測する.
・出血の好発部位であるキーゼルバッハ部位を最初に疑い,患者を少しうつむかせてから,小ガーゼや綿球を軽く詰めて同側の鼻翼を圧迫することで,出血の勢いが減弱するかどうかを試みる.
・出血側の鼻翼の圧迫でも出血の勢いが減弱せず,反対側鼻孔からの血液の流出がみられるようになったり,咽頭への流入が増えたりするようであれば,キーゼルバッハ部位以外の可能性が高い.
・小児の鼻出血の出血部位では,鼻炎に伴う習慣性の鼻いじりが関与するため,鼻炎症状がなかったかを確認する.特に幼児では就寝中の鼻出血が多い.
・高齢者の鼻出血では,高血圧のコントロールが不良の場合があるため,内科的な治療介入が十分であったかを確認する.
・出血以前から片側性(同側)の鼻閉が存在していたり,反復性もしくは難治性の鼻出血であったりする場合には,腫瘍性や血液疾患に伴う鼻出血の可能性