今日の診療
治療指針

構音・言語障害
speech and language disorder
香取幸夫
(東北大学大学院教授・耳鼻咽喉・頭頸部外科学)

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ニュートピックス

・疾病の理解が社会的に重要である吃音(どもり)に関して,「幼児吃音臨床ガイドライン 第1版」が2021年に発刊された.

治療のポイント

・患者の会話から関連する器官や神経調節のどこに異常があるかを類推し,関連する専門医や言語聴覚士への紹介を行っていく.

・コミュニケーション障害に関して,患者の心理面や社会適応に配慮する.

◆病態と診断

A病態

・言語音は,喉頭で作成される原音をもとに,咽頭,鼻腔,口腔の構音器官からなる共鳴腔で作られ,この過程が構音である.構音器官の形態や神経調節に障害が生じると,共鳴腔の形状が作れず発話が障害される.

・言語の受容と生成には,音声言語と視覚言語が用いられ,言語中枢が理解と調節を担う.言語中枢ならびに末梢への神経系が障害されると言語の聴取や発話が困難になる.

吃音(きつおん,どもり)は,話し言葉が非流暢な発話障害である.その9割は主に幼児期に発症する発達性吃音で,発症率は8%に及ぶ.体質的,発達的,環境要因が互いに影響し合い発症する.

B診断

・機能性構音障害:言語発達遅滞,構音に関与する神経系の未成熟,難聴などを原因として構音の異常が習慣化した状態.

・器質的構音障害:構音器官の形態異常や機能異常により構音の異常を呈する状態.唇顎口蓋裂,鼻咽腔閉鎖不全,頭頸部癌切除後の組織欠損などが原因となる.

・運動障害性構音障害:神経・筋疾患による構音器官の運動障害を原因として構音の異常を呈する状態.脳血管障害,パーキンソン病,筋ジストロフィーなどが原因となる.

・言語発達遅滞:先天性難聴,知的発達遅延,自閉症スペクトラム障害などにより言語の習得が遅れた状態.

・失語症:大脳半球の器質的病変により言語機能が障害された状態.言葉の理解はできるが言語の発出が困難な運動失語(ブローカ失語)と,自発言語は流暢だがその内容が空虚で,言葉や文字の理解が困難な

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