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治療指針

嚥下障害
dysphagia
古川竜也
(神戸大学・耳鼻咽喉科頭頸部外科学)

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GL嚥下障害診療ガイドライン2018年版

ニュートピックス

・嚥下評価や嚥下訓練にはエアロゾル発生を伴う手技が多く,日本嚥下医学会より「新型コロナウイルス感染症流行期における嚥下障害診療指針」が発表された(2021年2月改訂).

治療のポイント

・嚥下障害は単一の疾患ではなく,患者ごとの発症原因や病態を適切に把握することが治療の前提となる.

・嚥下機能の評価法には簡易検査(RSST,水飲みテストなど),嚥下内視鏡検査,嚥下造影検査などが広く用いられる.

・治療は栄養管理を含む全身治療,口腔ケア,嚥下リハビリテーション,外科的治療などが用いられる.

◆病態と診断

A病態

・嚥下障害は,脳血管障害・神経筋疾患・頭頸部癌・胸部疾患など種々の疾患およびその治療により生じるが,明らかな原因疾患がないサルコペニア高齢者の嚥下障害も増加している.認知機能低下,咀嚼障害,口腔保持・移送障害,嚥下反射惹起遅延,咽頭収縮力低下,食道開大不全など多様な病態が単独または複合して起こり,対応も異なる.

・適切な治療のため,下記の検査による病態診断を行う.このとき,摂食嚥下の5期分類(認知期,準備期,口腔期,咽頭期,食道期)に分けて整理すると理解しやすい.

B診断

・問診:発症経過,既往症,食事の様子,治療意欲,嚥下障害を起こしうる内服薬の有無などを中心に情報収集する.嚥下評価・訓練自体に誤嚥リスクを伴うものがあるので,どの程度リスクをとって経口摂取に挑戦できるか,今後原因疾患はどう推移しそうかなども評価しておくと治療計画に役立つ.

・診察:認知機能,体幹保持能などを含む全身状態の評価と口腔・咽喉頭の診察を組み合わせる.特に下位脳神経麻痺は嚥下障害に直結しやすい.

・スクリーニング検査(簡易検査):反復唾液嚥下テスト(RSST:repetitive saliva swallowing test)(30秒間に唾液嚥下

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