今日の診療
治療指針

頸部腫瘤
neck masses
三澤 清
(浜松医科大学教授・耳鼻咽喉科・頭頸部外科学)

治療のポイント

・頸部腫瘤の原因は多岐にわたるため,短期間で改善しないものは耳鼻咽喉科へ紹介する.

・急性炎症や悪性疾患など,見逃してはいけない疾患を適切に鑑別する.

・生検後に悪性腫瘍と診断されて耳鼻咽喉科に紹介となることがあり,安易に生検しない.

◆病態と診断

A病態

・頸部腫瘤は原因によって炎症性腫瘍,良悪性腫瘍,先天性嚢胞に大別される.

急性炎症は,数日以内の発症で痛みや発熱を伴う.リンパ節炎や,咽頭・口腔内感染に伴う腫脹がある.

悪性腫瘍は,数日~数週間単位で増大し,可動性不良である.頭頸部癌のリンパ節転移が多く,左鎖骨上窩転移では上部消化管癌も考える.飲酒・喫煙者が多い.ヒトパピローマウイルス(HPV)関連中咽頭癌や甲状腺乳頭癌のリンパ節転移は嚢胞変性して側頸嚢胞と鑑別困難なことがある.唾液腺癌や甲状腺癌などでは年単位で増大することもある.

先天性嚢胞の典型例では,正中頸嚢胞は前頸部舌骨上に,側頸嚢胞は胸鎖乳突筋前縁で顎下腺後方に認める.嚢胞状リンパ管腫は軟らかい.先天性疾患であるが,成人になり急性炎症で受診することも多い.

B診断

1.炎症性疾患

・伝染性単核球症は,発熱,扁桃偽膜を認め,血液検査で異型リンパ球や肝酵素逸脱を認める.ウイルス抗体価が診断に有効である.

・亜急性壊死性リンパ節炎は,原因不明だが若年女性に多く,頸部リンパ節腫大や発熱が月単位で継続する疾患である.血液検査で白血球減少やLDH上昇を認め,生検で確定診断することも多い.

・小児で発熱が継続する場合,化膿性リンパ節炎や川崎病を疑う.初期では鑑別に苦慮することも多い.

・オウム病,猫ひっかき病,トキソプラズマ症などの人畜共通感染症による感染性頸部リンパ節腫大では,職業や生活歴を問診し,必要に応じて抗体検査を行う.

・結核性リンパ節炎では,リンパ節内や周囲の壊死,皮膚発赤を認める.穿刺や生検材料で塗抹,培養,PCR検査

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