ポイント
・喉頭摘出患者の音声言語を失ったショックは計り知れず,一日でも早く代用音声を獲得させることが望ましい.その点では手術直後から発声が可能な口腔伝導型電気式人工喉頭が優れている.
・代用音声のリハビリテーションの手順は,第一に容易に習得できる笛式または電気式人工喉頭発声を練習し,日常会話ができるようにする.
・その次に習得に時間がかかる食道発声法をじっくり練習するのがよい.
・さらに,気管食道瘻形成による合併症やプロテーシス維持に必要なコストを理解したうえで,より流暢な会話を希望する患者には,プロテーシスによる発声法が適している.
◆治療方針
喉頭摘出後患者は音声言語を失うため,喉頭摘出後の音声リハビリテーションはQOLの向上に非常に重要な役割を果たす.喉頭摘出後の代用音声としては,食道発声法,人工喉頭発声法(笛式,電気式),喉頭形成やボイスプロテーシスによる気管食道瘻発声法がある.これらの方法にはそれぞれ長所と短所が存在するため,患者一人一人に適した方法を助言できることが望ましい.
A食道発声法
食道発声法は,食道に嚥下した空気を人為的なゲップで逆流させ,新声門となる粘膜を振動させて発声する.この特殊な技術を習得し会話ができるようになるには,少なくとも半年程度の訓練を要する.高齢で体力のない患者や空腸再建患者では習得が困難なことがある.ただし一度習得すると,器具を必要とせずハンズフリーで会話ができるため衛生的で,経済的にも優れている.食道発声の熟練度はさまざまであるが,上級者では抑揚のある流暢な会話ができ,非常に優れた発声法である.
B人工喉頭発声法(笛式,電気式)
人工喉頭には笛式人工喉頭発声法(以下笛式,図1図)と電気式人工喉頭発声法(以下電気式,図2図)がある.また,両者の長所を生かした口腔伝導型電気式人工喉頭発声法もある(図3図).いずれも器具によって作り出された振動によ