今日の診療
治療指針

歯周病(歯肉炎,歯周炎,咬合性外傷)
periodontal diseases(gingivitis,periodontitis)
柳澤拓明
(アルト歯科・口腔外科(愛知))

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治療のポイント

・歯周基本治療(プラークコントロールの徹底・歯石除去など)により歯周組織の炎症改善をはかり,十分な効果がみられなければ歯周外科治療により深い歯周ポケット内の起炎性因子(肉芽組織や歯石など)を除去する.

・歯周病は再発率が高いため,症状改善後も歯科医師・衛生士による管理と患者本人によるセルフケアが必要である.

・全身性疾患(糖尿病・白血病・HIVなど)の口腔内症状としても現れることを診断の際に考慮する必要がある.

◆病態と診断

A病態

・歯周病とは歯周組織(歯肉・セメント質・歯根膜・歯槽骨)を破壊する疾患の総称で,多くの場合プラーク中の細菌が原因となる.

・歯肉炎・歯周炎:歯周組織にみられる炎症性病変のうち炎症が歯肉に限局している状態を歯肉炎,歯肉炎が進行し症状が歯根膜や歯槽骨にまで波及した状態を歯周炎と分類する.

・歯肉炎では歯肉の易出血発赤・腫脹・浮腫・歯肉形態の変化,歯周炎ではさらに歯周ポケットからの出血や排膿,歯槽骨の吸収やそれに伴う歯の動揺,口臭,膿瘍などの症状を呈する.

・増悪因子:喫煙,ストレス,肥満,糖尿病,薬剤(フェニトイン・ニフェジピン・シクロスポリンA)の副作用による歯肉増殖,口呼吸など.

・歯周病と全身性疾患:誤嚥性肺炎,糖尿病,アルツハイマー型認知症,癌などの発症・進行の危険因子として報告されている.

・咬合性外傷:歯への許容量を超える負荷により生じる歯・歯周組織の傷害であり,疼痛や咬耗,歯の破折・動揺,修復物の脱離,象牙質知覚過敏,歯槽骨吸収などの症状を呈する.過度な咬合力,歯列不正や適合不良の修復物・義歯の使用などによる一部の歯への負荷の集中,側方圧,口腔悪習癖などが原因として挙げられる.歯周炎が進行している場合は重症化しやすい.

B診断

・視診(歯肉の色や硬さ,プラーク・歯石の付着の程度),歯周組織検査(4mm以上の歯周ポケットの有無,出

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