◆病態と診断
A病態
・哺乳行動は,吸啜・嚥下・呼吸が協調して行われる一連の運動であり,哺乳障害の病態はそれぞれの運動に障害が生じている場合,あるいは運動の協調に問題がある場合がある.
・口唇・口蓋裂などの口腔先天異常,心疾患やてんかん,ダウン症候群などの全身疾患,喉頭軟化症・喉頭麻痺などが哺乳障害の原因として挙げられる.また,哺乳時の姿勢や乳首形態が障害の一因となる場合も考えられる.
B診断
1.口腔内の観察
・口腔内を慎重に観察し,口内炎や口蓋裂がないか診察する.
・粘膜下口蓋裂の場合,口蓋前方の観察だけでは診断が困難なため,口蓋垂の形態異常がないかを確認する.また,口唇裂はごく軽度の場合もあるため,特に機能時の口唇形態に左右差がないかを確認する.軽度の口唇裂がある場合,口蓋裂や粘膜下口蓋裂を伴うこともしばしばみられる.
・さらに手指を口腔内に挿入し,口唇閉鎖,舌の運動などから吸啜力を確認する.
2.哺乳時の観察
・空腹時に受診してもらい,実際の哺乳状態を確認する.哺乳姿勢や抱き方などを観察する.
・直接母乳の場合は,乳汁の分泌量も重要となる.哺乳瓶の場合は,乳首の大きさ・長さ・硬さ・乳孔の形態も診査する.逆流防止弁が誤った向きで装着されていたり,哺乳瓶から圧をかけ過ぎていたり,哺乳瓶の使用法が間違っている場合もある.
・普段の哺乳時の様子や哺乳時間,哺乳間隔などの問診も重要である.
3.嚥下造影(VF)検査,喉頭ファイバー検査
・哺乳量が極端に少ない場合や,嚥下後にすぐにミルクの逆流がある場合には,食道閉鎖や胃食道逆流症,喉頭軟化症・喉頭麻痺などを疑い,VFや喉頭ファイバー検査を行う.これらの検査は哺乳障害の病態の把握には有用である.
◆治療方針
A直接訓練
哺乳姿勢は上体を起こして腹部を圧迫しないようにし,乳首は吸啜窩に収まるように深く保持し,最大約20分/回の哺乳時間などを目安に指導を行う.直接
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