今日の診療
治療指針

口腔の先天異常と口唇裂・口蓋裂
congenital orofacial anomaly,cleft lip and/or palate
西條英人
(東京大学医学部附属病院・口唇口蓋裂センターセンター長)

治療のポイント

・口唇裂・口蓋裂は,機能的・審美的な回復を求められる疾患である.歯科領域のなかでも,口腔外科医のみならず,矯正歯科医,補綴歯科医による咬合機能回復は重要であり,言語機能獲得に対しては,言語聴覚士による管理も重要である.

・全身的な問題も抱えていることが多く,小児科のみならず多くの専門家の介入が必要な疾患である.

・出生より成人に至るまで治療が及ぶため,その期間は非常に長く,治療が終わってからも歯科的な口腔管理を含めた経過観察が重要となる.

◆病態と診断

A病態

・日本人における口唇口蓋裂児の発生率は,およそ500人に1人といわれており,体表の先天異常のなかでは,非常に多い疾患である.一方で,白人における口唇裂・口蓋裂の発生頻度は800人に1人,黒人では1,500~2,000人に1人とされている.

・裂が認められる部位により,口唇裂と口蓋裂に分けられる.また,その両方に裂がみられることも多く,その場合は口唇口蓋裂または唇顎口蓋裂とよばれる.

・裂型別の発生頻度は,口蓋裂が男性より女性に多く,反対に口唇口蓋裂は男性に多い.また,片側裂は両側裂よりも多く,左側裂が右側裂より多く発生する.

・口唇口蓋裂児では合併疾患を有する場合があるが,そのなかでも,粘膜下口蓋裂では,精神発達遅滞や心疾患を併発している場合もあり,小児科医との連携が特に重要である.

・発生機序に関しては,口唇が形成されるのは胎生6~7週,口蓋は少し遅れて9~12週頃である.この時期に何らかの機転により癒合不全が生じ口唇口蓋裂が発症する.

・原因は明らかではなく,遺伝的要因と環境要因(喫煙,アルコール,薬,放射線,ストレスなど)が重なり合って発生する多因子説が考えられている.

B診断

・口唇裂の場合では,両側性と片側性があるものの,視診上は明らかであるために診断は容易である.

・口蓋裂に関しては,硬軟口蓋裂,軟口蓋裂,粘膜下口蓋

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