今日の診療
治療指針

先天性鼻咽腔閉鎖不全症
congenital velopharyngeal incompetence
田中 晋
(大阪大学大学院教授・口腔外科学第一教室)

治療のポイント

・明らかな軟口蓋筋走行異常を伴う疾患(口蓋裂)は基本的に除外して診断する.

・22q11.2欠失症候群は本症を呈する病態の1つで,必要に応じて染色体検査を実施する.

・本態の異なる原疾患が含まれているため,病態・重症度に合わせた治療法を選択する.

◆病態と診断

A病態

・先天性鼻咽腔閉鎖不全症は,鼻咽腔閉鎖不全をきたす疾患のうち,口蓋裂や明らかな粘膜下口蓋裂を除くさまざまな原因による疾患が含まれる.

・潜在性粘膜下口蓋裂,軟口蓋半側萎縮症,軟口蓋短小症などの軟口蓋形成不全,深咽頭,進行性球麻痺や軟口蓋部の局所麻痺(先天性ミオパチーなど)が挙げられる.

・筋組織の萎縮や線維化がみられる症例では神経系の異常の有無について考慮する必要がある.また,特徴的な顔貌(両眼開離,細長い目,鼻根部平坦,耳介低位)を有する疾患では,22番染色体q11.2の部分欠失を有するものがあり(22q11.2欠失症候群),精神発達遅滞を背景に鼻咽腔機能低下を認める場合がある.

B診断

・音声聴覚判定や,鼻息鏡やナゾメーターを用いたブローイング検査による構音時の鼻腔への呼気漏出の程度により鼻咽腔閉鎖不全を確認する.

・口蓋裂手術や扁桃,アデノイド手術,口蓋・咽頭腫瘍摘出手術の既往など後天的要因や,口腔内診査にて,典型的な粘膜下口蓋裂の形態的特徴であるCalnanの3徴候(口蓋骨後縁正中の切れ込み,軟口蓋正中部の菲薄化,口蓋垂裂)を認めるものは除外する.

・粘膜下口蓋裂以外の形態異常の有無や,脳性麻痺やてんかん,ミオパチーなど基礎疾患の有無について確認し,必要に応じて精神・運動発達遅滞の有無や,染色体検査による精査を行う.

・鼻咽腔閉鎖機能について精査が必要な場合には,軟口蓋造影側方頭部X線規格写真や鼻咽腔ファイバースコープ検査を行う.

◆治療方針

 鼻咽腔閉鎖不全に対する保存的治療である言語治療(構音訓練),発音補助装

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?