今日の診療
治療指針

不正咬合
malocclusion
芝崎龍典
(栄駅前矯正歯科クリニック・理事長(愛知))

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◆病態と診断

A病態

・歯の位置異常や,歯列弓形態の異常,上下歯列の異常な噛み合わせなどを総称して不正咬合とよぶ.

・歯が部分的に重なった叢生とよばれる問題は,歯と歯槽骨の大きさや形態的な不調和によって起こる.その他,上顎前突(頭蓋や下顎に対して上顎前歯や上顎骨が前に出ている),下顎前突(頭蓋や上顎に対して下の前歯や下顎骨が前に出ている),開咬(上下の歯が接触せずに隙間がある)や過蓋咬合(上下の歯が過度に噛み込んでいる)などの不正咬合があり,先天的な骨格性の問題もしくは後天的な機能性の問題が複合的に絡んでいることが特徴である.

・先天異常,舌や口腔周囲筋の不良習癖,鼻咽腔疾患,歯の喪失,顎関節疾患などは不正咬合を引き起こす原因である.

B診断

・形態的もしくは機能的な不調和を招く不正咬合の原因として,遺伝的な要因と環境的な要因が疑われる.

・矯正治療を開始する前に,患者の出生から現在に至るまでの何らかの不正の原因を医療面接で把握し,検査(口腔内写真,顔面写真,模型顎機能検査,顔面領域のX線写真)を行う.そのなかでも顎顔面骨格の分析は重視され,正面および側面の頭部X線規格写真(セファロ)が用いられる.その理由は,規格化されたX線写真を撮影して縦断的分析を行い,不正咬合の背景にある顎骨形態異常や頭蓋顔面成長発育のパターンを把握することが可能なことにある.

・機能的な不調和が疑われる場合は,舌圧や口輪筋の強さ,発語の検査など,詳細な分析を行う.機能的な問題を放置すると,治療の遅延や治療後に後戻りしやすいため注意が必要である.

◆治療方針

 治療方針は診断結果と開始時期を考慮し決定する.顎骨の成長の有無や第2大臼歯までの永久歯萌出完了前後を境として,1期治療および2期治療と分けられるのが一般的である.

 1期治療の方針は良好な顎骨の成長を促進することや口腔機能発達不全の改善である.そのた

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