今日の診療
治療指針

顎変形症
jaw deformity
竹川政範
(旭川医科大学教授・歯科口腔外科学講座)

GL顎変形症診療ガイドライン(2008)

ニュートピックス

・顎変形症治療では,手術前の歯科矯正治療を省略して最初に顎矯正手術を行うSurgery First法(SF法)が試みられている.SF法は顔貌の早期改善,治療期間が短い,治療が効果的などの利点があるが,術後歯科矯正治療により咬合を確立させるため従来の顎矯正治療とは手順が異なる.そのため,今後SF法に関して,治療方法の標準化を行う必要がある.

治療のポイント

・顎顔面の形態的・機能的な診断のうえで治療計画を立案し,術前矯正治療,顎矯正手術,術後矯正治療,保定の順に治療を遂行する.

・治療は術前矯正開始から保定まで2~3年の期間を要する.

・口腔外科医,歯科矯正医ならびに関連各診療科の専門医が共通理解をもち,チームアプローチにより治療を行う.

◆病態と診断

A病態

・顎変形症は上顎骨および下顎骨の大きさ,形態,位置などの異常,上下顎骨の関係の異常によって顎顔面の形態異常と咬合の異常をきたすことで,口腔機能の低下や顔貌の不調和を示す疾患である.

・顎変形症の原因には,症候群や口唇裂・口蓋裂など先天的要因によるもの,成長や発育異常および骨折や手術による後天的要因によるものがある.

・上顎前突,下顎前突,開咬,顔面非対称に伴う不正咬合がみられる.

・思春期前後からの成長発育により顎変形症が顕著となることが多く,学校検診により指摘されて歯科を受診することが多い.

・下顎後退症では上気道の狭窄を生じやすいため睡眠時無呼吸を生じることがある.

B診断

・セファログラム分析によって顎顔面頭蓋の骨格構造を3次元的に計測し,頭蓋に対する上下顎の位置,上下顎関係,顎骨自体の形態などの骨格型分析,歯牙の位置や傾斜関係などの咬合型分析を行う.

・口腔模型を用いて咬合状態を観察,顔貌写真分析により正面および側面の顔貌形態の様相を把握する.

・CTにより顎骨の3次元的形態ならびに神

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