今日の診療
治療指針

歯の破折,顎骨(顎顔面)骨折
fracture of teeth and maxillofacial bones
藤本雄大
(磐田市立総合病院・歯科口腔外科部長(静岡))

治療のポイント

・顎骨(顎顔面)骨折は咬合偏位が起きることが多いので,咬合状態の確認をまず行い,次に陥没や変形,口腔出血,鼻出血の有無などを確認する.生命の維持に必要な,意識の喪失,ショック状態の有無,出血による気道の確保を最優先させる.

・顔面骨骨折(頬骨,頬骨弓,鼻骨)は咬合の偏位を認めないが,鼻出血を認めたら上顎骨骨折,頬骨骨折,鼻骨骨折を疑う.

・歯牙脱落の場合は保管状態がよければ再植術が可能になることが多い.歯の保存液に浸漬させれば24時間以上歯根膜組織を保存可能である.牛乳で6時間,水道水で1時間程度保存可能といわれている.十数分の乾燥で歯根膜組織は壊死するため,保存液が何もない場合は口腔内に保管させ医院まで運ばせる.

◆病態と診断

A病態

・顎骨骨折(上顎骨・下顎骨)の最も大きな特徴は咬合の偏位,疼痛である.上顎骨,頬骨,鼻骨骨折の場合は鼻出血を伴う.開口障害,開口痛を伴う場合は下顎骨骨折,頬骨(弓)骨折を疑う.

・歯の脱臼は上顎前歯部に好発し,震盪,亜脱臼,脱臼,嵌入,挺出・脱落に分類される.歯の破折は歯冠破折,歯根破折に分かれるが,いずれも歯に外力が強く介した場合は歯の痛みが生じる.

B診断

・鼻骨骨折,頬骨骨折は単純X線写真では感度および特異性が低いため,顎顔面骨折が疑われる場合は必ず単純CT撮影を行う.

・歯牙破折はデンタルX線写真による診断が標準的であるが横方向の破折線を視認しづらい.近年のコーンビームCT(CBCT)ではスライス幅が0.08mmのデータを得ることが可能で,自由断面移動を併用することで微細な破折線も診断可能である.

◆治療方針

A顎骨骨折

 変位が軽度で咬合状態が常時安定している場合は保存的治療が選択可能であるが,治療期間が長くなる欠点を有する.

B咬合異常・関節突起骨片の大きな変位,中顔面,鼻,頬部の変形を認める場合,保存的治療では困難な場合

 外科的治療が適応

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