今日の診療
治療指針

口腔ケアと喫食
oral care and eating
樺沢勇司
(東京医科歯科大学大学院教授・健康支援口腔保健衛生学)

治療のポイント

・「口腔ケア」という用語は,日本口腔ケア学会を中心とした多くの啓蒙の努力により,歯科分野では人々に最も知られた用語となっている.

・厚生労働省の「生活習慣病予防のための健康情報サイト(e-ヘルスネット)」では,「口腔ケア」とは,狭義の口腔清掃や口腔保健指導を中心とするケアと,広義の歯科治療から口腔の機能訓練までを含むケアという,2つの枠組みで捉えることができるとされている.さらに,口腔ケアは,口腔に関連する各種疾患の支持療法として,口腔ケアによる新たな治療法や予防法の研究にもつながり,その進歩と役割の拡大が期待されている.

・特に,食事や会話が少なくなる.高齢者の誤嚥性肺炎と喫食障害との関係は重要であり,嚥下機能の評価のみならず,適切な食形態の選択や食事介護を行う必要があり,緊密な専門職種間の連携(チーム医療)が重要になる.

◆病態と診断

・喫食障害の病態を理解するためには,その発生原因を検討することが重要である.

・喫食障害の生じる原因としては,以下の項目が考えられる.これらの要因が単一ではなく複合的に関連している場合も多い.

1)脳梗塞や脳出血などによって引き起こされた意識障害

2)神経難病(パーキンソン病,重症筋無力症,多発性硬化症など)の進行

3)認知症の進行

4)誤嚥性肺炎や慢性閉塞性肺疾患(COPD)など呼吸器疾患による呼吸状態の悪化

5)がん悪液質の進行

6)老衰の進行

7)歯科疾患(齲蝕,歯周病,歯性感染症,義歯の不適合,カンジダ性口内炎,口腔粘膜炎など)

8)食事の環境や食品の嗜好,提供の状況,体位(ポジショニング)など

9)薬剤による口腔乾燥や摂食嚥下障害

・また,喫食障害が生じた状態においては,口腔機能の低下をはじめとしてさまざまな障害が生じる.代表的なものとしては,以下のようなものがある.

1)口腔乾燥

2)脱水

3)嚥下障害

4)栄養障害

・そしてこのすべての状態が,以下に

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