ニュートピックス
・インフルエンザおよびCOVID-19においても感染予防に口腔ケアが重要である.また,肺炎の重症化への予防効果がある.
治療のポイント
・患者への「声かけ」「説明」を丁寧に行うことが重要で,これから口腔ケアが行われるという認識をもたせることが重要である.
・しばしば開口拒否に出くわすため,口腔周囲筋マッサージ(リラクゼーション)や適切なケア用品の選択が重要である.時に,フィンガーブロックなどの開口補助具や徒手的開口法を用いる.
・乾燥を伴う口腔内汚染に対しては,「保湿」することからケアを開始する.ケアが終了したあとも積極的に「保湿」を心がける.
・口腔ケア時の余剰水分の誤嚥に留意し,最大限の回収に努める.
◆病態と診断
・超高齢社会が進み,認知症患者も増加している.また,近年では口腔ケアが重要視され,日本人の主要死因でもある誤嚥性肺炎には口腔常在菌が大きく関与し,その予防の観点からも口腔ケアは必要不可欠なものになってきている.
・認知症患者の口腔内は不衛生であることが多い.これは認知症症状の物忘れ,うつ状態(無気力),無頓着という典型症状からくるものと考えられる.このような状態が続くことにより,口腔内細菌が増加し嚥下機能の低下とともに誤嚥することで誤嚥性肺炎などの全身疾患へと波及してしまう.
◆治療方針
口腔ケアの目的は,①口腔内疾患(齲蝕や歯周病など)の予防,②全身疾患波及の予防(誤嚥性肺炎,感染性心内膜炎など),③口腔機能の維持(経口摂取の維持,オーラルフレイルの予防),④唾液分泌の促進(口腔乾燥予防,味覚などの感覚維持)である.認知症を前兆期(MCI),初期,中期,末期と分類する.
A認知症前兆期(MCI)
日常生活には特に支障をきたさないが,これまでの生活習慣の乱れやブラッシングなどのセルフケアを怠るなどの症状を認める.個人の尊厳を守りながら注意を促す.