Ⅰ.顎関節症
治療のポイント
・日本顎関節学会「顎関節症治療の指針2020」に基づく.
・患者教育とセルフケアなど自主訓練を指導,励行する.
・補助的に薬物療法とアプライアンス療法を行う.
◆病態と診断
A病態
・顎関節症の概念は,顎関節や咀嚼筋の疼痛,顎関節雑音,開口障害ないし顎運動異常を主要症候とする障害の包括的診断名である.
・原因不明なことが多い.日常生活を含む環境因子(ストレスフルな対人関係),行動因子(歯ぎしり,横寝,片噛み,頬杖,脚組み)など多因子により発症する.
・特に緊急性を要する疾患(外傷,炎症,腫瘍,顎関節強直症)など,鑑別診断が重要である.日本顎関節学会「顎関節・咀嚼筋の疾患あるいは障害(2014年)」「顎関節症と鑑別を要する疾患あるいは障害(2014年)」参照.
1.咀嚼筋痛障害(Ⅰ型)
・咀嚼筋痛,顎運動時痛,顎運動障害が主症状.
2.顎関節痛障害(Ⅱ型)
・顎関節円板障害,内在性外傷(過重な咀嚼,歯ぎしり)などで,顎関節痛や顎運動障害を生じる.
3.顎関節円板障害(Ⅲ型)
・顎関節症の6~7割を占める.
a.復位性関節円板前方転位
・関節円板が前方転位して,開口時,閉口時に顎関節雑音のクリック音(ポキッ,カクッという持続時間の短い単音)を生じる.
b.非復位性関節円板前方転位
・前方転位したまま開口障害が生じる(クローズドロック).
・開口路の患側偏位.
4.変形性顎関節症(Ⅳ型)
・主徴候は,退行性病変(下顎頭,関節窩の変形,顎関節円板の穿孔,断裂).
・顎関節雑音のクレピタス(捻髪音,ジャリジャリ,ミシミシという持続時間の長い摩擦音),顎運動障害,顎関節部の痛みが主症状.
B診断
・病態分類を基に,疼痛部位の確認,誘発テストでいつもの痛みを再現,触診でクリック触知,CT,MRI検査,クレピタスにより診断する.詳細は日本顎関節学会「顎関節症の診断基準(2019)」参照.
◆治療方針
2週間~1