今日の診療
治療指針

口臭
halitosis,breath odor
渡辺正人
(JR東京総合病院・歯科口腔外科部長)

治療のポイント

・口臭を主訴に受診される場合,心理的口臭症も念頭に心身医学的配慮が問診に求められる.

・口臭原因の多くは歯周病および付着した舌苔である.

◆病態と診断

A病態

・口臭とは,本人あるいは第三者が不快と感じる呼気の総称である.

生理的口臭として加齢性口臭,起床時口臭,妊娠性口臭,ニンニク,アルコールなど飲食物による口臭がある.病的口臭として歯科口腔,耳鼻咽喉領域の疾患あるいは糖尿病,肝疾患など全身疾患由来のものがある.

・臭気原因物質は,主に揮発性硫黄化合物である.剥離上皮や唾液,血液成分,食物残渣などの蛋白質が,嫌気性細菌によって分解される過程で発生する.

・口臭症は生理的,器質的,精神的な原因により口臭に対して不安を感じ気になり悩む症状である.

・口臭症は,生理的口臭症と病的口臭症に大別され,さらに病的口臭症は器質的(身体的)口臭症と心理的口臭症に分けられる.

・心理的口臭症には神経症性障害(不安障害,身体表現性障害など)が含まれ,口腔心身症に該当する.ほかに精神病性障害(統合失調症,妄想性障害など)に分類される.

B診断

・生理的口臭や器質的口臭の原因になりうる疾患にかかわる問診以外に,臭いへのこだわりの有無を十分に把握するため,心理的口臭症を念頭に社会的・心理的要因に配慮した問診をする.

・次に口臭検査を行い臭気の有無を判定する.検査法は,嗅覚による官能試験と口臭測定器による分析を併用する.官能試験は主観的であり臭気の質を定性的に判定する.評価の客観性を高めるため複数の人による判定法もある.

・測定器による分析は揮発性硫黄化合物など特定の臭気物質の定性・定量的測定に優れている.最も精度の高い口臭測定器として淡光光度検出器を備えたガスクロマトグラフィーが用いられるが,設備が大型で高価である.また,安価で移動可能な半導体ガスセンサーを用いた簡易型測定器もある.対象は主に硫化水素,メチ

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