今日の診療
治療指針

循環器疾患患者の抜歯,歯周手術
dental surgery in patients with cardiovascular diseases
川又 均
(獨協医科大学主任教授・口腔外科学)

GL抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン2020年版

A循環器疾患関連患者数

 循環器疾患関連の外来通院患者数(2019年)は,高血圧症1,561万人,狭心症・心筋梗塞222万人,脂質異常症663万人,その他の循環器疾患225万人である.また,脳卒中(脳出血,脳梗塞など)136万人である.抗血栓薬服用患者数に関しての明確なデータはないが,心房細動の患者数が100~200万人,心臓弁膜症患者は年間2万件程度の手術が行われている.それら以外の疾患も含め抗凝固療法を受けている患者数は100万人以上であると推定されている.抗血小板薬では,低用量アスピリンは2010年には約460万人に処方されており,対象疾患患者数から考えると,さらに多くの患者に種々の抗血小板薬が処方されていると考えられる.

B高血圧症患者

 血圧管理が優先される.処置時の高血圧と高血圧症による動脈硬化や心臓・腎臓への影響と,外科的ストレスに対する循環器の予備力を考慮する必要がある.その点も含め,処置前に循環器主治医に問い合わせ,連携して行う.局所麻酔薬へのエピネフリンの添加に関しては,添加しないことにより十分な局所麻酔薬の効果が得られないこと,1/8万のエピネフリンは循環器への影響があることが問題である.エピネフリン濃度を1/20万にする,あるいは循環器系への影響の少ない血管収縮薬(フェリプレシン)含有の局所麻酔薬を少量(0.5mL程度)注入後,1/8万エピネフリン含有局所麻酔薬を注入することで循環器への影響が少なく,十分な局所麻酔薬の効果が得られるという報告もある.抜歯や歯周外科治療などを行う際は,バイタルサインをモニタリングし,確実な止血を行う.

C抗血栓薬

 抗血小板薬として,アスピリン,チエノピリジン系(チクロピジン,クロピドグレル,プラスグレル),シクロペンチルトリアゾロピリミジン系(チカグレロル),シロスタゾー

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?