今日の診療
治療指針

骨粗鬆症患者の抜歯,歯周手術
tooth extraction and periodontal surgery in osteoporosis patients
渡邉和代
(刈谷豊田総合病院歯科・歯科口腔外科部長(愛知))

治療のポイント

・骨粗鬆症の治療薬の種類によって骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ)が生じることがある.ビタミンD製剤,エストロゲン製剤,テリパラチドを使用してもARONJは起こらない.骨吸収抑制薬;ビスホスホネート(BP)製剤,デノスマブ,ロモソズマブはARONJ発生の可能性があるため,注意が必要である.

・抜歯,歯周手術などの治療において,原則的に骨吸収抑制薬の休薬は行わず,感染対策を徹底して治療することが重要である.

・ARONJの予防,治療には医科歯科の連携が重要であり,医師は骨吸収抑制薬の投与に際し,患者にARONJの可能性について説明し,歯科受診を勧めることが望ましい.

◆病態と診断

AARONJの病態

・ARONJ(anti-resorptive agents-related osteonecrosis of the jaw)の発症原因はまだ不明な点が多い.骨のリモデリング,骨吸収の過度な抑制,血管新生の抑制,口腔内細菌感染の関与,免疫機能の低下などが考えられているが,感染による影響は大きいと考えられる.

・ARONJの初期症状として歯肉腫脹,口腔粘膜潰瘍,歯の動揺などがあり,徐々に骨露出や骨壊死を認める.

・抜歯や歯周手術などの顎骨に侵襲がおよぶ手術後に発生頻度が増加する.

BARONJの診断

・「骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2016」の診断基準に従う.なお,顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2016が発表された2016年にはロモソズマブは日本未承認であったため,この時点では診断基準には含まれていない.

1)BPまたはデノスマブによる治療歴がある.

2)顎骨への放射線照射歴がない.また骨病変が顎骨へのがん転移ではないことが確認できる.

3)医療従事者が指摘してから8週間以上持続して,口腔・顎・顔面領域に骨露出を認める,または口腔内,あ

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