今日の診療
治療指針
在宅

在宅医療 最近の動向
川越正平
(あおぞら診療所・院長(千葉))

A社会の動向

1.国民の意識と在宅医療の提供体制

 わが国の人口は,2005年以降減少局面に突入している.その一方で,2021年時点において1,880万人(15.0%)である後期高齢者数は,2030年には2,288万人(19.2%)に増加すると予測されている.日本財団が行った人生の最期の迎え方に関する全国調査(2020年)によれば,最後を迎えたい居場所について,高齢者の58.8%が「自宅」を希望している.財政論的な要請ではなく,国を挙げて在宅医療を推進することが高齢者の希望実現につながるのなら喜ばしいことである.

 在宅医療の提供体制構築に関して,担い手である在宅医や訪問看護師を増やすことが,現在でも重要なテーマであり続けている.訪問看護ステーションについては2012年以降増加傾向にあり,2022年4月時点で14,304か所となっている.サービス利用者数も着実に増えており,小児を含むあらゆる年齢層を対象としているという特徴がある.かかりつけ医が在宅医療に取り組むにあたり,パートナーとして最も頼りになる存在である.

2.死亡統計からみる在宅医療の現状

 在宅死亡数は1950年以降一貫して減少傾向が続いたが,年間12.7万人(在宅看取り率12.4%)であった2004年以降漸増傾向に転じており,2020年には21.6万人(同15.7%)となっている.特に,コロナ禍の2020年は前年と比べて2.8万人増加した.ただし,在宅死亡数には,認知症対応型共同生活介護(グループホーム)やサービス付高齢者住宅における看取りも含まれていること,さらには突然死,事故死はもちろん,孤独死も含まれていることを留意する必要がある.特に,孤独死の数は全国で3万人にのぼり,年々増加しているとの推計があることから,その混入を差し引いて現状を認識する必要がある.データが存在する東京都区部の場合,2019年の孤独死数は5,

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?