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治療指針
在宅

低栄養への対策
management of undernutrition
前田圭介
(国立長寿医療研究センター・老年内科医長(愛知))

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治療のポイント

・低栄養は見過ごされがちであるものの併存疾患の予後を左右する重要な病態である.

・低栄養スクリーニングとアセスメントを用いた適切な診断基準の適用が求められる.

・食事の工夫,食欲減退への介入,栄養と運動の複合介入の視点が重要であり,薬剤処方だけで解決することは少ないため,管理栄養士をはじめとした栄養専門家との多職種連携を検討する.

◆病態と診断

A病態

・健康な栄養状態を維持するために必要な熱量および栄養素の体内への取り込みが,不足し続けた結果生じた代謝異常の総称である.

疾病に関連した低栄養,および飢餓や社会的問題(食品へのアクセス)などに起因した低栄養に大別される.

・疾患関連低栄養は慢性または急性炎症による体蛋白異化亢進,エネルギー消費量増大,消化管機能低下や摂食嚥下機能低下に起因する.

B診断

・2018年に発表されたGLIM(Global Leadership Initiative on Malnutrition)基準に準じて診断することが望ましい.

・まず信頼性および妥当性が検証済みの低栄養スクリーニングツールを用い,低栄養リスクを同定する().

・低栄養リスクを認めた場合,現症3項目(体重減少,低BMI,低骨格筋量),および病因2項目(食事摂取量不足または消化不良,急性または慢性疾患)を評価する.アジア人における各項目の判断基準をに示す.

・現症および病因にそれぞれ1項目以上異常を認めた場合,低栄養と診断する.

◆治療方針

 治療の選択肢としては,熱量・栄養素摂取の増加,食欲減退への対処,運動療法との組み合わせがある.画一的に治療法が決まるわけではなく,低栄養に至った原因を推論し,その原因にも介入することが重要である.また,改善すべき低栄養なのか,改善できる低栄養なのかの見極めも必要である.同判断は,客観的指標だけで行うのではなく,個々の実情に沿った判断

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