◆病態と診断
・要介護高齢者は口腔衛生管理が行き届かず,口腔内汚染が著明な場合が多い.これは自身での口腔内清掃が困難であること,また口腔周囲筋の廃用による機能低下で口腔内自浄作用を失っていることを示唆している.
・要介護高齢者に対して口腔衛生管理の介入をすることで誤嚥性肺炎が減少するといわれて約20年経過したが,口腔機能の低下が摂食嚥下機能に関係しているなど多くの報告がみられる.
・口腔は栄養摂取するうえでの第1関門であり,最初の消化器官であるため,口腔機能が障害されると,栄養摂取不良や摂食嚥下機能障害に繋がり,高齢者のQOLに大きく影響を与える.
◆治療方針
Aフレイルとオーラルフレイル・口腔機能低下症
フレイルという概念が老年医学会で提唱されて,口腔内領域においてはオーラルフレイルと表現されている.オーラルフレイルは口腔領域の虚弱を意味し,わずかなむせや食べこぼし,滑舌の低下といった口腔機能が低下した状態を示すものであり,国民の啓発に用いるキャッチフレーズである.オーラルフレイルと口腔機能低下症とはオーバーラップされる部分が多く,区別されるものではない.日本老年歯科医学会は,この両概念はどちらも重要であり,オーラルフレイルの用語を用いて国民へ口腔機能に対する重要性を啓発し,オーラルフレイルであると感じたら,歯科医院を受診し,口腔機能低下症の検査を受けることを日本歯科医師会と協働で推奨している(図).
B口腔機能低下の抽出
口腔および摂食嚥下機能障害の対策として重要なのは,早期での口腔機能低下の気づきである.つまり図の口腔機能低下症のフェーズかそれ以前での介入が重要である.口腔機能低下に対する病名として2018年に保険収載(歯科領域)された口腔機能低下症が挙げられる.本病名は口腔不潔,口腔乾燥,咬合力低下,舌口唇運動機能低下,低舌圧,咀嚼機能低下,嚥下機能低下の7項目の診査があり,3