今日の診療
治療指針
在宅

在宅経管栄養管理
management of tube feeding in home
鈴木里彩
(東京医科歯科大学・総合診療科)

治療のポイント

・十分な経口摂取が行えない場合の栄養投与方法として,腸管が使えれば経腸栄養を選択する.

・投与量は体重や体格,栄養動態を評価して調整する.定期的な体重測定は重要である.

A経管栄養の適応

 「経口摂取ができないか不十分だが,腸管は使える患者」が対象となり,目的は十分な栄養療法である.摂食嚥下障害(脳血管障害,神経・筋疾患,頭頸部外傷,腫瘍など)や急性疾患により一時的に食欲が低下した例が良い適応となる.

 認知症や老衰,慢性疾患の終末期など予後が期待できない場合,経管栄養によるエネルギーの充足を試みても,背景の病態が回復することは見込めない.人工的栄養投与の開始前に,目標や意義について本人・家族と十分に話し合うことが望ましい.

B投与経路

 1か月以内に経口摂取の回復が見込める場合はまず経鼻胃管を,より長く経腸栄養が必要になる場合は胃瘻を造設するのが一般的である.チューブの先端は通常胃内に留置するが,胃疾患や逆流のために空腸に留置されることもある(腸瘻).瘻孔の作成場所は通常は胃で,解剖学的に困難な場合は食道瘻(PTEG:percutaneous transesophageal gastrostomy)が選択される.

 胃瘻(PEG:percutaneous endoscopic gastrostomy)造設のための入院は通常数日~1週間であり,在宅での管理や手技について,訪問診療や訪問看護で退院後に継続指導する.初回の胃瘻交換は約半年後に,造設した医療機関で行う.このとき在宅で交換可能な物品へ変更することが多い.

C栄養の投与量とモニタリング

 確立されたエビデンスはないので,体重×25~30kcal/日程度を目安に栄養投与を開始し,栄養状態や体重の推移をみながら調整する.近年,フレイルの高齢者を対象とした介入試験で1.2g/kg/日の高蛋白質投与が筋肉量や身体機能の維持に有効

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