今日の診療
治療指針
在宅

看取りのプロセスと医師の役割
process of end-of-life care and doctor's task
竹田幸彦
(ひだまり診療所・院長(群馬))

ニュートピックス

・アナモレリン(エドルミズ)が保険適用となり,がん悪液質に伴う食欲不振や体重減少に使用できるようになった.

治療のポイント

・在宅における死亡数の1/3はがんであるが,2/3は慢性疾患などの非がん患者である.緩和ケアは,一般内科医として必須の知識である.

・非がん患者には,がん患者と異なる緩和ケアの視点が必要である.

・予後を予想し,積極的治療か症状緩和を行うか検討する.

・患者の希望をケア提供者間で共有する.

・治癒することは時々しかできないが,癒すことは常にできる.

・看取りにおける医師の役割はマネジメントである.

Ⅰ.がん患者

◆病態と診断

・悪液質の発生機序は不明な点が多い.蛋白質分解誘導因子や炎症性サイトカインの活性化が注目されている.

・前悪液質,悪液質,不可逆的悪液質と3段階のステージ分類が提唱されている.

・明確な診断基準はないが,不可逆的悪液質とはPS(performance status)が3~4と低下し,予後3か月以内が予想される時期である.

◆治療方針

A予後予測

 PS3は予後3か月,PS4は予後1か月と予想される.体重減少はがんの早期からみられるが,死亡する1~2か月前から著明に減少する.予後1か月前後になると,食欲不振や食事量の減少もみられるようになる.

B患者と家族の意思を確認する

 「意思決定支援」の項()参照.

C患者の意思を共有する

 ケア提供者間で患者の意思を共有する.情報共有をすることで,急変時などに不要な救急搬送や心肺蘇生術を回避することができる.

D症状コントロール

 最も苦痛と感じている症状から,コントロールを開始する.倦怠感や食欲不振も,症状緩和が可能である.疼痛コントロールは,緩和ケアの入り口でありゴールではない.

 死や疼痛に対する恐れをもつ患者は多い.その恐れに対して,「死が近くなればなるほど,痛みが強くなるということはありません」「痛みがどん

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