今日の診療
治療指針
在宅

意思決定支援
宮本雄気
(よしき往診クリニック(京都)/京都府立医科大学救急医療学教室)

治療のポイント

・患者の価値観や希望に基づいたケアの目標を設定する.

・意思決定支援に関する用語を誤用しない.

・意思決定支援の重要な要素の1つとして,代理意思決定者の選定がある.

・意思決定支援において医師による予後予測は重要である.

A意思決定・同意取得の方法

 医療現場での意思決定や同意取得の方法には,①パターナリズムやシンプルコンセントによる治療方針の決定,②インフォームド・コンセントによる患者同意,③SDM(shared decision making)による意思決定支援などが挙げられるが,人生の最終段階における意思決定では③が最善であることが多い.

 SDMとは「価値観や治療への期待・懸念などの患者の意向とエビデンスや予後予測を含めた医学的情報の双方を医療者・患者で共有しつつ,協同して意思決定を行うコミュニケーションプロセス」のことを指す.具体的には,患者の①価値観,②大事に思っていること,③治療に期待・懸念していること,④許容しがたいことなどを,患者や代理意思決定者(後述)から聴取し,医療者が医学的情報と合わせて最善のケアを提案する.

 この際,一つひとつの細かな治療の意向を問うことよりも,ケアの目標や患者の価値観といった大きな視点で治療方針を決定すること(goal-oriented decision making)が望ましい.

B意思決定に関する用語

 以下の用語はしばしば誤用されることがあり,ここで整理しておく.

1.DNAR(do not attempt resuscitation)

 心肺停止時に蘇生処置を行わないという治療方針・指示を指す.あくまで心肺停止時の蘇生処置に対する指示であり,DNAR指示のみでその他の治療を差し控えてはならない.

2.ACP(advance care planning)

 将来の医療やケアについて,患者の価値観やケアの目標などについて本人とケア提供者

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