今日の診療
治療指針
在宅

慢性心不全患者のケア
total care and management for patients with chronic heart failure
大石醒悟
(兵庫県立はりま姫路総合医療センター・循環器内科医長)

ニュートピックス

・2021年日本循環器学会より「循環器疾患における緩和ケアについての提言」が上梓された.本提言では心不全の緩和ケアを含む循環器疾患全般に関する項目が網羅されている.

治療のポイント

・心不全のケアは治療の継続を前提とする.

・心不全診療におけるかかりつけ医の果たすべき役割は大きい.

・在宅で患者の意向を支えるためには苦痛症状の緩和は必須となる.

・在宅でどこまで対応可能か把握し,必要時には救急対応の可能な施設と連携する.

A治療と並行して提供する心不全の緩和ケア

 慢性心不全においても疾病を抱えながらQOLを向上させるアプローチである緩和ケアの重要性が認識され,ガイドラインや保険算定などの整備が進められている.かかりつけ医が果たすべき役割も大きくなっており,資材も充実してきている.本項では,心不全の緩和ケアについて概説し,症状緩和の方法論の一部について取り上げる.

 心不全は症状が出現した(ステージC)後,適切な治療を行うことで長期にわたり寛解し,その後徐々に進行する時期を経て,最終的に治療抵抗性心不全(refractory heart failure)と言われる状態(ステージD)に至り,死に至る経過を辿る.それぞれのステージに合わせた治療目標のなかで,ステージC以降の治療目標に緩和ケアが示されている().

 心不全症状が出現すると,治療も強化されるが,さまざまな苦痛も増すため,緩和ケアも多面的介入として提供される.この段階で医療者として重要なことは,適切な治療が行えているか確認すること,心不全の経過を自分事としてとらえてもらえるように心不全経過を患者および家族とともに見直し,患者の抱える苦痛に合わせて緩和ケアを提供していくことである.ステージDに至った状況で考え始めた場合には,受けたい医療や最期を過ごす場所に関する希望を実現できる可能性も低くなるため,長い心不全の経過のな

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?