Ⅰ.パーキンソン病
治療のポイント
・治療の優先順位をつけ,全体としてQOLを上げることを目標に治療に当たる.
・投薬治療が限界であれば,デバイス療法も選択肢となる.
・遺伝子治療の臨床検査も始まっており,成果を期待したい.
◆病態と診断
・訪問診療で治療に当たるのは,初期治療から何年か経過し,日常生活に何らかの介助を要する進行期の患者である.
・L-DOPA製剤の長期服用に伴う運動合併症のほか,認知症その他の非運動症状を合併し,病態は複雑である.
◆治療方針
AL-DOPA製剤の長期服用に伴う運動合併症(wearing-offとジスキネジア)
進行期ではL-DOPAの効果が期待できる血中濃度の幅が徐々に狭くなり,血中濃度の変動が大きくなる.血中濃度が高すぎればジスキネジア,低すぎればwearing-offをきたす.この2つの治療方針は同じで,血中濃度がなるべく変動しないようにすることが必要である.そのためには,L-DOPAの服薬回数を増やす,ドーパミンアゴニストを加える,エンタカポン,セレギリン,イストラデフィリン,ゾニサミドなどの併用を行う.
Bデバイス療法(device-aided therapy)
内服治療が奏効しない場合の選択肢として検討する.
1.脳深部刺激法(DBS:deep brain stimulation)
治療に適するのは,L-DOPAへの反応性が良好だがジスキネジアが強い,振戦が強い,認知機能が良好な症例である.認知症,薬剤誘発でない精神症状,脳萎縮のある患者には推奨されない.
2.レボドパ・カルビドパ経腸療法(LCIG:levodopa-carbidopa intestinal gel)
胃瘻造設が必要である.本人ないし家族が,薬液とポンプの管理ができることが求められる.DBSに比較して,年齢と認知機能の適応が広い.
C非運動症状
認知症,ムズムズ脚症候群,起立性低血圧,排