今日の診療
治療指針
在宅

医療的ケア児とその家族へのケア
caring for children with special healthcare needs and their families
大石明宣
(明世会信愛医療療育センター・理事長(愛知))

A医療的ケア児の在宅療養

 医療の発達とともに乳児死亡率が低下し,それに並行するように気管切開,吸引,酸素吸入,人工呼吸器,胃瘻,導尿など,かつては病院内でのみで行われていた医療処置が一般家庭でも施行可能となった.しかし,こうした処置を要する児童を養育・介護する家族の身体的・精神的負担はきわめて大きい.一方,こうした医療処置は生活に必要な「医療的ケア」であって医療職以外も施行可能であるという考えが芽生え,一定の条件のもとに,教師,ヘルパー,リハビリ職員などの第三者がいかなる場所においても吸引,経管栄養注入などの医療処置ができるよう法改正がなされ,医療的ケア児が在宅で療養できるようになってきた(全国約2万人と推計,2021年).

 医療的ケア児の基礎疾患は遺伝性疾患,出生時障害などさまざまであるが,その多くは身体障害,知的障害を合併している.しかし,なかにはそうした障害がないにもかかわらず呼吸器ケアなどの医療的ケアを要する小児もいる.そのような医療的ケア児は「障害」がないということで福祉の対象ではなかったが,医療処置のみならず福祉による生活支援が欠かせない.

 2021年9月施行の「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」に基づいて「医療的ケア児支援センター」が各都道府県で設置される予定であり,医療的ケア児等への支援者の養成,地域で関係者が協議を行う場の設置,医療的ケア児等に対応する看護職員確保のための体制構築,医療的ケア児等の家族への支援等を総合的に実施することになっている.

 退院後の医療管理の主体は基幹病院が行うが,感染対策や待ち時間等の配慮が必要である.日常の診療や定期予防接種については近隣の病院や診療所が行ったほうが医療的ケア児にとっては負担が少ないこともある.特に,呼吸器装着などで移動に負担のかかる重度の医療的ケア児の場合,訪問診療が望ましい.訪問系支援サービス

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?