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在宅

助けを求める力が欠如した患者(セルフ・ネグレクト状態)への対応
support to patients lacking the ability to ask for help(self-neglect state)
沼沢祥行
(松戸市在宅医療・介護連携支援センター(千葉))

ニュートピックス

・松戸市における医師アウトリーチ実施事例のうち,精神科医による専門アウトリーチを要する事例の割合や若年事例が増加している.

ポイント

・医師アウトリーチは,「助けを求める力の欠如」した方に対する訪問支援の1つであり,大まかに医療的な診たてを行い,方向性を定める取り組みである.

・医師アウトリーチは,在宅医療・介護連携推進事業の枠組み,もしくは認知症初期集中支援チームの枠組みを用いることで,全国で実現可能である.

Aセルフ・ネグレクトとは“助けを求める力の欠如”を意味する

 岸らは,セルフ・ネグレクトを「健康,生命および社会生活の維持に必要な,個人衛生,住環境の衛生もしくは整備又は健康行動を放任・放棄していること」と定義している.本項では,千葉県松戸市医師会におけるセルフ・ネグレクト状態への対応の取り組み例を紹介する.

Bセルフ・ネグレクトを含む医療関連困難事例

 地域には,認知症,身体障害,精神疾患,高次脳機能障害,発達障害,知的障害,アルコール等依存,ひきこもりなどを抱えている方が暮らしている.老老,認認,ダブルケア,8050,生活困窮,虐待などの課題を有する世帯も存在する.松戸市で困難事例型の地域ケア個別会議に報告された事例の分析から,独居や認知症のほか,地縁の欠如,家族の課題(障害など),医療連携の課題(かかりつけ医不在など),助けを求める力の欠如(サービス利用拒否など)などの課題の複合化が明らかとなった.地域包括支援センターは医療・介護関係の多職種や地域関係者と連携し,支援が必要な事例に対して早期覚知・早期対応をはかる必要があると考えられた.しかし,医療機関受診や介護保険の利用を拒否,認知症か精神疾患なのか判然としない,虐待やセルフ・ネグレクト疑い事例など,いわゆる医療関連困難事例は,相談支援だけでは解決に至ることが難しい.

C医療的な診たてを行う医師アウトリーチ(

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