今日の診療
治療指針
在宅

居住系施設の介護職員との協働
cooperation with nursing care staffs
久島和洋
(ドクターゴン鎌倉診療所・在宅診療部長(神奈川))

ポイント

・居住系施設では,居宅で患者家族やホームヘルパーが担う介護のすべてを施設介護職員(以下,介護職員)が請け負うため,施設への訪問診療を行う場合,施設の看護師を含めた介護職員との連携が不可欠である.

・施設訪問診療を円滑にするために医師が行うべきことは,①介護職員への病状確認のしかたの指導,②介護職員への情報提供のしかたの指導,③施設介護職員が医師に対して遠慮しない雰囲気作り,が重要と考える.

A病状確認の指導

 介護職員は医療職ではないため,まずは介護職員の観察眼を養う必要がある.そのためには,訪問診療の場面で,介護職員に観察してほしいポイントについて具体的に指導することが望ましい.例えば「急性大動脈解離後,高血圧で降圧薬を多剤内服しています.降圧のしすぎで低血圧になり無気力になったり,起立性低血圧を起こしたりするので血圧を1日1回測定することと,起居時のふらつきなどに注意してください」とか「糖尿病の薬を内服中です.補水困難や嘔吐・下痢を認めたら意識状態の低下をはじめ,急激に精神・身体状態が悪化することがあるので,すぐに連絡をください」といった具合である.わかりやすく丁寧に説明することで,介護職の病状変化に対する理解を高めることができる.説明に際し留意すべきは,介護職員は医療専門職ではないことである.医療専門用語を頻用しては,せっかく説明しても相手に理解してもらえないことはもちろんのこと,介護職員から「相談しづらい医師」とレッテルを貼られかねない.

B情報提供の指導

 医師にはなじみの深いSOAP形式〔S(subjective):主観的情報,O(objective):客観的情報,A(assessment):評価,P(plan):計画〕で報告してもらえるよう,介護職員に指導するとよい.正直なところ,医療職からの報告でも的を射ていないと感じることはよく経験するであろう.介護職員にと

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