簡略に漢方の診察法を述べる.
四診 漢方医学の診断法は望診,聞診,問診,切診の四診からなる.この四診を総合して,患者の証を決定する.患者の証の診断は治療法の指示,すなわち湯液名の決定である.
切診によって陰陽,虚実,気,血,水を判断する大きな手がかりが得られる.
切診 切診とは術者の手指を直接患者のからだに触れて診察することである.脈診と腹診が最も重要である.
脈診:脈診とは手の橈骨動脈茎状突起の内側で,その拍動を診ることである.
腹診:腹診は患者を仰臥させ,両膝を曲げず下肢全体を伸展させて行われる.
代表的な腹証を解説する.
まず腹壁が厚いか薄いかをみる.腹壁の皮下脂肪と筋肉が厚く,腹部全体に弾力のある場合は実証.逆に腹壁の皮下脂肪,筋肉ともに薄く,軟弱無力である場合は虚証である.
1)心下痞硬(しんかひこう)(図1図)
心下痞硬とは心窩部がつかえる感じと同部の抵抗・圧痛を含めていう.代表処方:半夏瀉心湯薬,甘草瀉心湯,人参湯薬.
2)胸脇苦満(きょうきょうくまん)(図2図)
胸脇苦満とは季肋部に患者が苦満感を自覚し同時に抵抗・圧痛を医師が認めることをいう.代表処方:柴胡剤(大柴胡湯薬,小柴胡湯薬など)の適応が考えられる.
3)小腹硬満(しょうふくこうまん)(図3図)
小腹硬満とはお血の腹証で,下腹部,特に臍下部左右に触知する抵抗・圧痛である.本証は骨盤うっ血症状と関連が深い.代表処方:桂枝茯苓丸薬,四物湯薬などの適応となる.本所見は婦人科疾患,肝疾患などに認められる.
4)小腹急結(しょうふくきゅうけつ)(図4図)
本所見は小腹硬満と同様,お血の腹証である.左腸骨窩に触知する抵抗と圧痛の代表処方:桃核承気湯薬.本所見は婦人科疾患にしばしば認められる.
5)小腹不仁(しょうふくふじん)(図5図)
本所見は下腹部の軟弱あるいは知覚鈍麻である.代表処方:八味地黄丸薬,牛車腎気
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