今日の診療
治療指針

日本におけるオンライン診療の現状と課題,海外の動静
黒木春郎
(医療法人社団嗣業の会 外房こどもクリニック・院長)


 近年,医師が遠隔地の患者を診療するDoctor to Patient(D to P)のオンライン診療が存在感を増している.しかし,オンライン診療については,公的医療保険上の評価や,医師のライセンスや対象疾患などの法規制が対面診療よりも制約が強く現場での採用の障害となり1),2019年末までは世界的にも広く普及しているとは言い難い状況であった.しかし,今般の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにおいて,感染対策の1つとしてオンライン診療が注目され,世界各国で規制緩和が行われ,活用が促されている2).本項では筆者らが行った規制動向調査の結果などを踏まえながら,日本におけるオンライン診療の現状と課題,海外の動静などについて概説する.


A.日本におけるオンライン診療の普及


 日本においては,2019年末までは,オンライン診療の普及はほとんど進んでいない状況であった.その理由としては,診療報酬の価格や算定要件が厳しかったことが大きい.2018年度の診療報酬改定で「オンライン診療料」が診療報酬のなかで初めて体系づけられた時点では,対象は一部の慢性疾患などに限定されていたうえ,算定医療機関から30分以内に通院可能な患者のみが対象であり,初診での実施も原則不可とされていた.また,オンライン診療では対面診療と同じ管理料を算定することができず,算定可能な点数が対面診療と比較して相当に低くならざるを得なかった.こうした使い勝手の悪さからか,オンライン診療料等を算定できるように届け出ていた施設は2018年7月時点で病院65施設,診療所905施設にとどまっており3),保険診療でのオンライン診療の普及はほとんど進んでいなかったといえる.2020年度の診療報酬改定においても,オンライン診療における算定条件の厳しさや,対象疾患の制限,対面診療と比較した点数の低さ,という点では大きな変化

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?