今日の診療
治療指針

付 健康被害救済制度


 医療行為に用いる医薬品や医療機器の安全性については承認前の臨床試験(治験)において検討が行われている.しかし,治験の対象者数は限られており(多くは1医薬品当たり1,000名前後が多い),また試験期間も比較的短いため(多くの場合1年以内),頻度は低い(例,0.1%)が重篤な副作用や薬物の長期投与後に発症する副作用については治験の段階で確実に除外することは理論的に困難である.このため,そのような副作用は市販された後にはじめて明らかになることが多い.このような事実を背景として,市販後に治療を目的として適正に使用された医薬品および生物由来製品による健康被害を公費で救済する目的で設立されたのが表の2種類の健康被害救済制度である.公表されたデータでは当該制度により令和2年度末までに26,159件に給付がなされている.

 ただし,抗癌剤,免疫抑制剤などの一部にこの制度の救済対象とならないものもあるので,詳細については独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)のホームページ(https://www.pmda.go.jp)の健康被害救済制度を参照されたい.平成20年4月からインターフェロン製剤(慢性B型またはC型肝炎などに用いる場合)による副作用も対象となった.制度上,救済給付の申請は健康被害を受けた本人またはその遺族が上記の機構に直接行うことになっているが,医学知識の少ない患者が独力で申請を行うには困難を伴うことも多い.また,令和2年度の一般人に対する調査では本制度の認知度は低く(「知っている」が7.6%,「名前は聞いたことがある」が17.9%),医師・薬剤師などで請求手続に関わったことがある者は7.0%であり制度が有効に活用されていない現実がある.医師や薬剤師は患者にこの制度の存在を積極的に説明し,申請に際して必要な書類の入手(上記ホームページからダウンロード可能)や添付する医師の

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