日々の診療現場で活用される医学知識は,膨大化と入れ替わりの速度を増し,より有効な治療法の導入とそれに伴う新たな副作用や合併症への対応を求められる場面が多くなりつつある.そのような変遷を続ける医療現場において,高度職業人(プロフェッショナル)としての医師に変わることなく求められる社会的使命がある.
Ⅰ.医師に求められる社会的使命
高度な医学知識と技術を身につけ,医師国家試験に合格した医師には,さまざまな社会的特権が付与されるとともに,高い倫理観に裏打ちされた社会的使命の遂行が求められる.その使命とは,眼前の患者の苦痛を軽減し生存期間を延長できる可能性が最も高い処置を講ずる(診療)ことと,国民の健康を保持・増進させるための組織的な衛生活動(公衆衛生)への貢献である.
近年の自然科学,特に生命科学の進歩と相俟って,科学としての医学は急速な進歩を続けている.そのような進歩する医学を,唯一無二の価値