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GL熱中症診療ガイドライン2015
治療のポイント
・熱中症に対する治療の遅れは予後を悪化させるため,迅速に治療を開始する.
・屋外での運動や労働作業後に発症する労作性熱中症(古典的熱中症)と,例えば真夏に換気の悪い室内にいることで高齢者に多く発症する非労作性熱中症に分類され,近年,後者が増加している.
・高体温をきたす熱中症と感染症の鑑別は重要である.
・可能な限り早期に体温を下げるため,各施設で迅速に使用できる冷却法を選択・準備しておく.
◆病態と診断
A病態
・熱中症は「暑熱環境における身体適応の障害によって起こる状態の総称」である.
・外部環境の影響により体内で発生する熱量を体外に放出できなくなることで生じる(熱産生>熱放出).その過程において,脱水症,電解質異常などをきたし,さらなる体温上昇にさらされると重要臓器障害をきたす病態である.
B診断
・熱中症の診断基準として「暑熱環境にいる,あるいはいたあと」に,めまい,失神(立ちくらみ),生あくび,大量の発汗,強い口渇感,筋肉痛,筋肉の硬直(こむら返り),頭痛,嘔吐,倦怠感,虚脱感,意識障害,けいれん,せん妄,小脳失調,高体温などの諸症状を呈するもので,感染症を含むほかの原因疾患を除外したものである.
・軽症から重症までⅠ,Ⅱ,Ⅲ度の3段階に分類する.
・Ⅰ度は現場にて対応可能,Ⅱ度はすみやかに医療機関の受診が必要,Ⅲ度は入院(集中治療)が必要な病態である.
・Ⅲ度は中枢神経症状,肝・腎機能障害,血液凝固異常などの臓器障害を呈し,労作性か非労作性かの鑑別が,その後の治療方針の決定,合併症管理,予後予想の助けになる.
・DICはほかの臓器障害に合併することが多く,最重症と考えて治療にあたる.
◆治療方針
重症度に応じて,脱水・電解質の補正,積極的冷却,臓器障害に対する集中治療を行う.感染症との鑑別を行いつつ,同時に熱中症の治療も開始すべ