診療支援
治療

喀血―緊急検査と応急処置
hemoptysis:clinical examination and emergency treatment
今井 寛
(三重大学名誉教授)

治療のポイント

・喀血とは,気道からの出血を口や鼻から喀出することであり,1日あたり300~600mL以上喀血し,呼吸・循環に影響を与えるような場合を大量喀血とよぶ.大量喀血の出血源は90%以上が気管支動脈である.喀血全体の1.5%程度で致死的病態である.

・喀血量だけでなく,出血速度も重要である.

・基本的には致死的な病態であるので,集中治療管理ができる施設での管理が必要である.

◆病態と診断

A病態

・気道からの出血,程度はさまざまである.病態としては①外傷や異物による肺損傷,②肺血栓塞栓,肺うっ血などの循環障害,③結核・気管支拡張症,アスペルギルスなど炎症性疾患,④肺癌などの腫瘍,⑤血液凝固異常,⑥肺動静脈瘻,⑦自己免疫疾患などである.少量で呼吸・循環に影響がない場合には一般的検査の後,専門施設への紹介を考える.

B原因

・頻度の高い疾患は気管支拡張症気管支炎肺結核肺癌などである.

緊急性の高い病態としては肺癌,動脈瘤,動静脈奇形を鑑別に入れる.

・喫煙歴がある男性では肺癌を積極的に疑い検査を進める.

◆治療方針

A管理・診断の原則

 抗凝固薬・抗血小板薬を服用している患者では止血困難や遅発性出血を起こしやすい.抗凝固薬内服中の患者には内服薬の中止,新鮮凍結血漿・血小板輸血投与などを考慮し,抗血栓薬に応じた最適な拮抗剤や中和剤を検討する.

Px処方例 下記のいずれか,または両方を用いる.

1)カルバゾクロム(アドナ)注 1回25~100mg 点滴静注

2)トラネキサム酸(トランサミン)注 1回500~2,500mg 点滴静注

 出血および感染予防のために標準予防策が必要であり,喀血の原因として多い結核を否定できないときはN95マスクを使用する.

1.全身管理

 死亡の大部分は窒息によるものであるため,気道保護,呼吸管理,循環管理が必要である.大量喀血の際には基本的には気管挿管を行う.気管支鏡に

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