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治療

吐血・下血―緊急検査と応急処置
hematemesis,melena:emergency clinical examination and acute care
浜田善隆
(筑波メディカルセンター病院・消化器内科診療科長)

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治療のポイント

・消化管出血を疑う場合はすみやかにバイタルサインをチェックし,点滴,血液検査,輸血などの必要な初期対応を行い循環動態の安定化をはかる.

・活動性出血の場合は出血性ショックに移行することもあるため,早めに消化器内科医へコンサルトする.

・吐血患者にはプロトンポンプ阻害薬の点滴をあらかじめ行っておく.

・止血後は原因となった背景疾患の治療を行い再出血の予防に努める.

◆病態と診断

A病態

吐血(hematemesis)とはトライツ靭帯より口側の消化管からの出血のことを指し,出血の程度により黒褐色から鮮紅色までさまざまである.下血(melena)とは本来,タール便または黒色便が排泄されることを意味し上部消化管出血を示唆する言葉であるが,臨床現場では暗赤色,または鮮血便が排泄される血便(hematochezia)のことを「下血」と解釈して扱っていることが多い.上部消化管出血が著しいときには,消化管内滞在時間が短いためhematocheziaをきたすこともある.本項においては,下血はhematocheziaを示すものとして表記する.

・吐血,下血をきたす代表的な疾患をに示す.これらの疾患のうち,食道胃静脈瘤破裂,出血性胃・十二指腸潰瘍,大腸憩室出血は急激にショック状態に陥る危険性があり,緊急処置対応が可能な医療機関へのすみやかな搬送が必要である.

B診断

・問診,バイタルサイン,血液検査(BUN上昇,Hb低下),直腸診(タール便,鮮血便)で急性期の出血かどうか推測できる.また血液検査でHb低下を認めた際に,MCV,TIBC,UIBC,鉄,フェリチンを追加で調べることで急性期と慢性期の出血を鑑別できることもある.

・内視鏡検査が診断能として高く,また出血を呈している場合は止血処置に移行できるため非常に有用である.しかし侵襲的な検査でもあるため,可能であればまず造影CT検査で

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