頻度 ときどきみる
GL男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン(2017)
治療のポイント
・尿量が低下した場合には,まず尿閉なのか無尿なのかを鑑別する.鑑別には腹部超音波検査が有用である.
・尿閉は膀胱内の尿を排出できない状態であり,導尿するか尿道カテーテルを留置する.
・無尿は1日の尿産生が100mL以下に低下した状態である.原因により腎前性,腎性か腎後性かを鑑別して対応する.
Ⅰ.尿閉
◆病態と診断
A病態
・尿道の機能的,器質的閉塞,もしくは膀胱の収縮機能障害のために膀胱内から尿が排出できず,多量に貯留している状態である.
・急性尿閉と慢性尿閉に分類される.
・急性尿閉では,強い尿意にもかかわらず排尿ができずに下腹部膨満感と下腹部痛を訴える.男性では基礎疾患として前立腺肥大症がある場合が多い.総合感冒薬や向精神薬などの抗コリン作用を有する薬剤の内服や多量の飲酒が誘因となる.
・慢性尿閉は残尿量が長期にわたり徐々に増加してくる病態である.頻尿を訴えることもあるが,糖尿病や神経疾患などによる神経因性膀胱がある場合には無症状であることも多い.また,常に尿が漏れてくる溢流性尿失禁を訴えることもある.
B診断
・急性尿閉では視診で下腹部の膨隆を認め,触診では強い尿意の増悪と疼痛を訴える.腹部超音波検査で拡大した膀胱を認め,容易に診断できる.
・慢性尿閉は,頻尿などの症状から腹部超音波検査により,他科の腹部CTで偶然に拡張した膀胱と水腎症から診断されることもある.
・慢性尿閉では腎機能障害の可能性があり,腎機能の評価は必須である.
◆治療方針
ネラトンカテーテルにより導尿を行うが,男性で挿入しにくいときにはチーマンカテーテルを使用する.慢性尿閉や700mL以上の導尿量の場合には膀胱の過伸展による排尿筋機能低下の可能性があるため,1~2週間は尿道カテーテルを留置する.高齢男性の場合には前立腺肥大症があるか