治療のポイント
・ショックを早期に認知する.
・A(気道:airway),B(呼吸:breathing),C(循環:circulation)を常に意識して診療を行う.
◆病態と診断
A病態
・循環血液量減少性ショックとは,血管内容量低下により,重要臓器への血流が維持できなくなり,是正しなければ臓器障害が生じる病態である.
・ショックの原因は,出血性ショック(外傷,消化管出血など)と体液喪失(下痢,熱中症など)の2つに大別される.
・血圧は心拍出量(=1回拍出量×心拍数)×血管抵抗で規定される.循環血液量が減少した場合,1回拍出量が減少するが,代償機構として,心拍数や血管抵抗が増加して,当初血圧は維持される.この代償機構が破綻した場合,血圧は低下し,ショックとなる.
B診断
・診断基準として定められたものはないが,循環血液量が減少し,収縮期血圧が90mmHg以下であればショックと診断するのが一般的である.しかし,前述したように血圧の低下は早期に起こらないことに注意する.
・ショックの早期認知のために重要な身体所見は,皮膚所見(冷感湿潤など),毛細血管再充満時間(CRT:capillary refilling time)の延長(CRT≧2秒),脈拍(頻脈など),意識変容である.
・ショックの原因検索として,出血源の精査および体液量評価を行うが,超音波検査によるpoint of care ultrasound(POCUS)は,ベッドサイドで簡便かつ迅速に行えるため有用である.手技は,外傷初期診療時のFocused Assessment with Sonography for Trauma(FAST)に則って,心嚢腔,左右胸腔,モリソン窩,脾周囲,膀胱周囲を検索し,大量血胸,腹腔内出血,心嚢液貯留を評価する.また,POCUSは下大静脈径や呼吸性変動を測定することで,血管内容量の評価ができる.さらに,心嚢