頻度 よくみる〔全内科疾患の数%(1~5%)の頻度で,若い女性に多いが,心理社会的要因により誘発され年齢・性別を問わずに生じうる.過去に何回か同様な発作の既往がある場合が多い〕
治療のポイント
・「原因は精神的なもの」と安易に判断せず,換気量増大を伴う器質性疾患の除外が診療の第一である.
・症状が過換気に起因すること・致命的な病態でないことを説明し,不安を軽減する.
・呼吸法で症状消退を自覚できれば短時間で回復する.
・投薬必要時は意識鮮明になるまで酸素投与を行う.
・頻発例は精神科・心療内科に紹介し再発予防をはかる.
◆病態と診断
A病態
・心理的(不安・恐怖・緊張・パニック)や身体的(発熱・運動)要因から,肺胞換気量(呼吸回数×1回換気量)増加をきたす呼吸器心身症である.
・低動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)により呼吸中枢が抑制され呼吸困難・窒息感(呼吸器)を訴え,不安・恐怖(精神)が増悪しさらに換気が増大する.
・呼吸性アルカローシスに伴う血清Ca・P濃度低下は,脳血管収縮による頭痛・めまい・意識障害(神経)や血管収縮による手指の痛みを伴うしびれ,筋肉のけいれん(テタニー)を起こす.
・心理的ストレスから交感神経が緊張し,胸痛・動悸・血圧上昇(循環器)や悪心・腹痛(消化器)を生じる.
B診断
・診断基準はなく,頻呼吸と手足のしびれなどがあれば疑う.
1.問診と病歴聴取
・症状出現と心理的背景の関係を把握する.
2.身体診察
・呼吸困難と頻呼吸・手足のしびれ・筋硬直症状(助産師の手)・トルーソー(Trousseau)徴候・クヴォステック(Chvostek)徴候を確認する.
3.検査所見
・動脈血液ガス分析:動脈血酸素分圧(PaO2)低下のない呼吸性アルカローシス(PaCO2 低下とpH上昇)・肺胞気・動脈血酸素分圧較差正常.
・血清電解質:低P血症・低Ca血症.
4.器質的疾患の鑑別
・代謝性アシドーシスの代償性
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