GL頭部外傷治療・管理のガイドライン第4版(2019)
ニュートピックス
・脳震盪患者の多くは受傷後数日~数週間で完全に回復するが,15~30%では頭痛や疲労感,めまい,認知障害,精神症状などが数か月~数年持続する.これを持続性脳震盪後症候群という.最近の研究によると,持続性脳震盪後症候群を経験した人では抑うつ症状発現の確率が約4倍高くなることが示された(オッズ比 4.56,95%CI 2.82~7.37,p<0.001).この結果は,持続性脳震盪後症候群を経験した人はうつ病の症状を経験するリスクがあることを示唆し,脳震盪患者に対する早期のサポート体制やメンタルヘルスケアが重要であるとしている.
治療のポイント
・意識消失や外傷性健忘,頭痛などを有する患者では,専門医の受診とCT検査が必須である.
・受傷後の十分な神経症状の観察期間(24時間またはそれ以上)が推奨されている.
・最初の数時間は繰り返し神経症状をチェックし,神経学的悪化を認めればCTの再検を行う.
◆病態と診断
A病態
・脳震盪は一過性の脳機能障害を伴う頭部外傷であり,機能障害に形態変化としての脳損傷が加わった軽症頭部外傷とは異なった病態である.
・意識消失を伴わない場合もある.初診時では,脳震盪か否かを区別するのではなく,外傷による頭蓋内病変を合併する危険因子の有無により診察・治療を進める.
・脳震盪症状のほとんどは数日から数週間で消失する.しかし,患者の10~15%は長期的な症状を呈することが知られており,認知機能の障害が1年以上持続する場合がある.
・脳振盪を起こしやすいスポーツとして,ラグビー,柔道,ボクシング,サッカー,体操,ホッケー,アメリカンフットボールなどが挙げられ,練習中よりも試合中に多い.
・セカンドインパクト症候群(SIS):脳振盪が完全に回復していない時期に,再度頭部に外力が加わる(second impact)