頻度 あまりみない
GL改訂第6版外傷初期診療ガイドラインJATEC(2021)
GL改訂第2版外傷専門診療ガイドラインJETEC(2018)
治療のポイント
・高所墜落やハンドル外傷などにより胸部に高エネルギーが加わった患者では,胸部大動脈損傷の可能性を考慮してCTによる評価を行う.
・治療対象となる胸部大動脈損傷の多くは,左鎖骨下動脈分岐部直下の下行大動脈に生じる.
・血管外への出血,明らかな仮性動脈瘤形成,周囲の血腫が大きい場合は緊急にステントグラフト内挿術を行う.
・損傷が内膜のみの場合は保存的治療が可能であり,血圧と心拍数を厳密に管理する.
◆病態と診断
A病態
・自動車事故による衝突や高所墜落などによる急速な減速作用により,固定性の弱い大動脈弓部と椎体に固定されている下行大動脈の間に剪断力が生じるため,大動脈峡部を好発部位として損傷が発生する.
・Grade l(内膜損傷),Grade 2(壁内血腫),Grade 3(仮性動脈瘤),Grade 4(破裂)に分類される.
B診断
・診断には造影CTが必須である.
・胸部造影CT検査は,スクリーニング,確定診断のいずれにおいても有用性が高い.感度・陰性的中率はほぼ100%である.
・造影CTによる診断と評価においては,緊急度と治療方法を選択するための損傷分類を同時に施行する.
◆治療方針
ステントグラフト内挿術が治療の第1選択である.損傷形態や合併損傷により,保存的治療や準緊急または待機的治療も選択可能である.ステントグラフト内挿術は外科的修復術よりも死亡率・合併症発生率とも低く,解剖学的にステントグラフト留置可能な場合は第1選択である.
A損傷分類と治療法
1.Grade 1(内膜損傷)
内膜損傷範囲10mm以内を目安にして保存的治療を行う.
2.Grade 2(壁内血腫)
保存的治療を選択でき,進行を認めた場合は手術を考慮する.