頻度 情報なし
ニュートピックス
・循環動態の安定している横隔膜の単独損傷に対しては,最近,胸腔鏡下の修復術,小開胸での修復が行われている.
治療のポイント
・横隔膜ヘルニアにて発見されることがある.
・横隔膜損傷の治療は原則手術を行う.
・手術のアプローチは,損傷の時期,ヘルニアの有無などで開胸,開腹,鏡視下手術を選択する.
◆病態と診断
A病態
・横隔膜損傷は鈍的外傷の1~8%と比較的まれな疾患で,左右別発生頻度では2/3が左側に発生する.これは右側に肝臓が存在するためと,組織学的に脆弱な横隔膜の部分は左側の腱中心部であることに関連するともいわれている.腹腔内臓器損傷を合併する例が60~80%で,横隔膜欠損部から胃,結腸,小腸,大網,脾臓などが胸腔内へ脱出しやすい.そのため腹腔内臓器の損傷による出血性ショックと,胸腔内脱出による閉塞性ショックが混合した病態が起こりうる.
・受傷機転と損傷:わが国では,穿通性外傷より鈍的外傷のほうが,発生頻度が高く,90%は交通外傷によるものと報告されている.穿通性外傷による横隔膜損傷の発生機序は,外傷による急激で大きな胸腹部間の圧較差の発生や,外傷直後の胸郭の変形による横隔膜の過伸展による引きちぎれと考えられており,受傷機転としては,側方からの衝撃で発生しやすいといわれている.穿通性外傷では,乳頭の高さから臍の高さまでの間(吸気時,呼気時の横隔膜の位置)の穿通創は横隔膜損傷を起こしうる.
B診断
・受傷直後には横隔膜損傷が明らかでなく,胸腔内陰圧により腹腔内臓器が胸腔内に脱出することによる横隔膜ヘルニアとして,数時間~数日,あるいは外傷後遺症として長期間経過後に診断されることもある.
・横隔膜損傷疑い胸部X線写真では,横隔膜の不整像,胸腔内異常ガス像が挙げられる.
・CTでは,MDCTの再構築画像により,横断像のみならず,冠状断像などで,横隔膜の途絶,腹腔内臓器の