診療支援
治療

肝損傷
hepatic trauma
伊藤 香
(帝京大学病院准教授・外科学Acute Care Surgery)

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治療のポイント

・肝損傷の9割近くが非外科的治療でマネジメント可能である.

・造影CTで肝実質内の造影剤血管外漏出がある場合,血管塞栓術もしくは手術の適応となる.

・循環動態不安定な肝損傷患者は直ちに試験開腹術が必要となる場合もあり,外傷専門施設での診療が望ましい.

・凝固異常を伴う患者の場合の手術では,ダメージコントロール蘇生を意識した輸血戦略および肝切除などの根治的手術よりも,肝周囲パッキングによるダメージコントロール手術を行うほうが安全である.

・米国外傷外科学会(AAST:The American Association for the Surgery of Trauma)による肝損傷分類Grade Ⅲ以上の場合,胆汁瘻を合併する可能性がある.

◆病態と診断

A病態

・鈍的肝損傷:肝実質区域の境界に沿って損傷することが多い.門脈三管は強固な線維組織で覆われており損傷を受けにくいが,肝静脈は線維組織で覆われておらず,損傷を受けやすい.

・穿通性肝損傷:成傷器の軌跡に沿って,動静脈両方とも損傷を受ける.

・脈管損傷・胆管損傷を合併すると,仮性動脈瘤破裂,胆汁瘻,胆道出血などを生じることがある.

B診断

・循環動態不安定な患者:JATECに則った初期評価・初期蘇生を行っても循環動態不安定な場合で,腹部外傷が明らかな場合やFAST(focused assessment sonography for trauma)にて腹腔内液体貯留がある場合は,肝臓を含む腹腔内臓器損傷を疑う.ただし,胸部・骨盤X線写真も併用し,胸腔内出血や骨盤骨折による出血が合併していないかを確認する必要がある.

・循環動態正常な患者:FASTは腹腔内出血の有無を診断するのに役に立つが,FAST陰性であっても肝損傷を否定することはできない.造影ヘリカルCTは肝損傷Grade,血性腹水の量,活動性の造影剤血管外漏出,血管

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