頻度 あまりみない
治療のポイント
・循環動態が安定しているかどうか.
・主膵管損傷の有無とその部位.
・上記2点が治療方針に大きく影響する.
◆病態と診断
A病態
・膵臓は後腹膜に位置し,ここに外力が及ぶ外傷は限られているため,膵損傷は比較的まれであり,全腹部外傷の1%以下の発生頻度である.
・膵損傷による病態は,膵臓の外分泌液である消化酵素の後腹膜や腹腔への漏出が主なものであり,消化酵素による自己融解や炎症が最も問題となる.
B診断
1.循環動態が安定しない場合
・循環動態の不安定な腹部外傷はCTを撮影することなく開腹し,術中所見で診断する.
・内視鏡的逆行性膵管造影(ERP:endoscopic retrograde pancreatography)は可能であれば術中に実施する.
・半周以上の膵裂傷は主膵管損傷を示唆する所見である.
2.循環動態が安定している場合
・血液検査より画像診断(腹部造影CT,ERP)が有用であり,腹部造影CTで膵損傷を判断し,主膵管損傷が疑われる際にはERPで評価を行う.特に主膵管損傷の有無とその部位診断が治療上最も重要となる.初回CTでは明らかでない膵損傷が経時的に顕在化することもあるが,主膵管の評価が重要であることに変わりはない.
◆治療方針
A循環動態が安定しない場合
循環の安定が初回手術の目標であり,まず止血とドレナージを含む汚染管理を行う.特に膵頭部周囲の血管損傷(門脈や上腸間膜静脈)を伴う場合,主膵管損傷を認めてもドレナージのみにとどめ,切除や複雑な再建は二期的に行う判断も時に必要になる.
B膵頭部に主膵管損傷を認める場合
周囲臓器の合併損傷次第で非常に多彩な治療選択肢が生じる.膵単独の損傷で,ERPで損傷部位を越えて遠位主膵管にカニュレーションできる場合,膵管ステント留置を行って後腹膜ドレーン留置という手段も選択肢に挙がるが,慎重な経過観察を要する.十二指腸を含