診療支援
治療

四肢・指趾切断
limb,finger amputation
小川 令
(日本医科大学主任教授・形成外科学)

頻度 あまりみない

◆病態と診断

・切断肢も切断指も,重症四肢外傷・手外科・マイクロサージャリーに精通した医師の診断・治療方針決定が必要であるため,自施設で対応困難である場合は,適切な初期対応ののち,すみやかに専門医のいる施設へ転送する.

・切断肢は出血量が多く,出血性ショックの対応を含め,全身管理が必須である.

・切断肢では他部位に合併損傷を伴う多発外傷である場合も多く,全身精査とともに救命を最優先に治療を検討する.

・切断肢は緊急度が高く,阻血時間をできる限り短くしなければならず,再接着後の虚血再灌流障害にも注意を要する.

・切断指は冷却して保存することで12時間以上の待機手術が可能となる場合もある.

・完全切断は,末梢組織がすべて切断されているものを指し,不全切断は,かろうじて組織が連続しているが,血流がきわめて乏しく血行再建を要するものを指す.

・不全切断の場合,麻酔の前に,末梢組織の知覚の有無,自動運動による腱・筋・神経損傷の程度を確認しておく.

・手術室入室前にX線撮影を行い,骨折について評価する.さらに時間的余裕があれば血管造影を検討してもよい.

◆治療方針

A切断肢

 多発外傷を伴い救命処置を優先する場合,また切断組織の挫滅が高度の場合は,四肢の切断および断端形成とせざるを得ない場合がある.また,中枢側の止血を試み,全身状態に対する初期対応ののち,自施設で対応できない場合は,重症四肢外傷に対応できる施設へ転送する.上肢と下肢の切断では,上肢の切断の優先順位が高い.能動義手や筋電義手など義手の開発も進んでいるが,習熟に時間を要することや把持握力が弱いといった欠点もあり,継続使用が難しいといったリハビリテーション上の困難もあり,できる限り上肢は再接着を試みる.下肢の場合は,再接着が成功しても健常側との脚長差や足底知覚の回復が難しいといった問題も多くあり,再切断して義足を用いる場合も多い

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