診療支援
治療

圧挫症候群
crush syndrome
杉田 学
(順天堂大学大学院教授・救急・災害医学)

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治療のポイント

・病院前(救出前)からの医療介入が必要な場合もあるため,受傷過程や形態の詳細な観察が必要となる.

・急性期の対応と,引き続き行われる集学的治療が必要となるため,多くの人的・物的医療資源が必要となる.

・災害時で多数の傷病者が発生した場合には,非被災地域の病院への広域搬送も考慮する必要がある.

◆病態と診断

A病態

・四肢などの骨格筋が長時間にわたって強い力で圧迫された結果,外傷と虚血により引き起こされる全身性の症候群である.

・直接の圧挫外傷に加えて,圧迫解除後の再灌流障害が原因となる.

・圧挫部位はコンパートメント症候群を起こし,創部からの感染による感染や敗血症を合併することがある.

・圧挫が解除されると,損傷された筋組織から放出されたKにより,高K血症や代謝性アシドーシス,ミオグロビンにより尿細管障害や急性腎障害を起こす.

・救出までに時間がかかるため,循環血液量減少性ショックを合併することが多い.

B診断

・病歴:重量物に長時間圧迫されていたことで診断に至る.外傷に関連することが多いが,意識障害で長期間臥床している場合や,長時間の駆血に伴う場合にも起こりうる.

・身体所見:局所の外傷痕は重要だが,受傷(救出)直後には明らかでなくても時間とともに発赤,腫脹,水疱形成がはじまり,壊死を認めることもある.異常な神経障害(運動・感覚)が認められる場合には,局所の問題なのか脊髄損傷などの合併によるものかを鑑別するために詳細な神経診察が必要となる.

・血液検査:一般的な血液検査に加え,CPK,K,腎機能(BUN,Cr),血液ガス分析での代謝性アシドーシスなどを観察する.

・心電図:高K血症に伴うQRS延長,テント状T波に注意して観察する.

・尿検査:循環血液量低下による尿量減少,ミオグロビン尿による赤褐色尿に注意する.

◆治療方針

A細胞外液の輸液

 治療の鍵は,できるだけ早い輸液療

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