頻度 あまりみない(欧米諸国および日本の輸血過誤のデータより,輸血過誤は10万~50万件の輸血に対して1件発生し,不適合輸血による死亡は100万~500万件の輸血に対して1件発生している)
GL輸血療法の実施に関する指針(2020年一部改正)
治療のポイント
・不適合輸血はそれを防ぐための適切な検査,体制が重要である.また,輸血開始時にその輸血が適合試験を受けた本人のものであることを再度確認する.
・原因輸血製剤の投与中止.ショックやDIC,急性腎不全に対応するため集中治療室での治療を行う.
◆病態と診断
A病態
・急性溶血性副作用は,輸血製剤中の主として赤血球表面の抗原と患者の血中抗体との抗原抗体反応により,溶血が生じて起こる.補体の活性化により連鎖的に溶血が進み,死に至ることがある.Rh型血液型不適合や不規則抗体によるものもあるが,ABO型不適合輸血は症状も強く,50mL超の輸血では死亡率が17%にも及ぶため,輸血直後の様態観察による早期発見が重要である.
・症状は輸血静脈に沿った違和感,呼吸困難,悪心,腰痛,発熱,血圧低下である.
・遅発性溶血性副作用(DHTR:delayed hemolytic transfusion reactions)を示す例は輸血前には抗体がなく,二次免疫応答により増加したIgG同種抗体が原因となる.輸血後24時間以降3~14日程度で血管外溶血を認めるのが特徴である.黄疸や血色素尿がみられる.
B診断
・上記症状に加え,溶血性貧血の所見(貧血の進行,K・LDHなどの上昇),DIC,急性腎不全を合併する.
◆治療方針
不適合輸血はその予防に努め,発生しないようにするのが第一である.「輸血療法の実施に関する指針」には,輸血責任医師は,患者誤認,不適合輸血などを防ぐため,輸血実施時の手続き,副作用発生時の対応などを示した手順書を作成または改定する,とされている.ABO型血