GLJRC蘇生ガイドライン 2020
一般市民による小児のBLSは,成人と共通のアルゴリズムを用いて行う〔→,「一次救命処置(BLS)―成人」の項参照〕.
本項は,日常的に小児に接する機会が多い市民,救急隊員,および医療従事者が行うべき小児のBLSについて「JRC蘇生ガイドライン2020」〔日本蘇生協議会(JRC:Japan Resuscitation Council)〕に則り概説する.
A小児・乳児・新生児の定義と一次救命処置(BLS:basic life support)
出生後から思春期(15歳程度・中学生)までを小児として扱う.そのなかでも,1歳未満は乳児,出生28日未満は新生児と定義される.
一般市民が小児の心停止に遭遇する頻度はきわめて低いと想定されるため,一般市民においては,乳児・新生児に対する心肺蘇生(CPR:cardiopulmonary resuscitation)の方法は区別せず,成人と同様のアルゴリズムを用いてBLSを行うことが推奨される.一方で,保育士など日常的に乳児に接する機会が多い市民,救急隊員,および医療従事者においては,小児のなかでも胸骨圧迫など乳児に対するCPRの方法を区別しつつ「小児のBLS」を行うことが求められる.新生児の心停止に関しては「小児のBLS」の適用を原則とするが,「新生児の蘇生法」に習熟した医療従事者がいる場合はそちらが適用されうる.
B救命の連鎖
「救命の連鎖」は,以下の4つの要素から構成される.
1.心停止の予防
小児では心停止の原因として,交通事故,異物誤嚥・誤飲・中毒,溺水,火災といった不慮の事故が占める割合が大きい.その多くは予防可能であり,不慮の事故による障害の防止について市民啓発の重要性が強調されている.
2.危機的状況の早期認識と通報
呼吸障害やショックなど危機的な状況の患者を発見した場合は,心停止の可能性を考慮し