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治療

開胸心マッサージ [■心肺蘇生・循環系の緊急処置]
☆☆☆
open cardiac massage
織田 順
(大阪大学大学院教授・救急医学)

 蘇生的開胸術(ERT:emergency resuscitative thoracotomy)による開胸心マッサージは,閉胸的心臓マッサージである胸骨圧迫よりも心拍出量が多く,また血液の還流状態を直接確認しながら心蘇生法を行うことができる.緊張性気胸の解除,胸部下行大動脈遮断や胸腔内出血のコントロール,心膜切開による心タンポナーデの解除なども可能となる.

A適用

 主な対象は外傷性心肺停止である.①穿通性外傷であれば,現場では生命徴候(体動,対光反射,眼球運動,自発呼吸,心電図上の電気活動)が確認されたが,脈拍が消失したもの,②鈍的外傷であれば来院時に生命徴候が確認されたもの,とされているが,蘇生の可能性などを加味して現場で総合的に判断される.外傷による心停止では鈍的外傷や横隔膜下の臓器損傷や頭部外傷の場合,一般的に蘇生困難である.蘇生的開胸術が実施され,肉眼的に心停止が確認されれば直ちに開胸心マッサージを行う.

B手技

1)左前側方開胸で開胸を行う.左背部にタオルを入れ,左上肢を頭側へ挙上して開胸操作を行う.消毒は必ずしも必要としない.左第4または第5肋間に沿って皮膚切開を置く.男性では乳頭の足側,女性では乳房の足側を切開する.メスで胸骨縁から後腋窩線まで皮切を加える.クーパーで肋間筋・胸膜を切離して迅速に胸腔内に入る.生命徴候のある患者では鎮痛,鎮静,筋弛緩を考慮する.肺を損傷しないよう換気を一時だけ中断するなどする.

2)開胸器により開創し,胸腔内を迅速に確認する.有効な心マッサージを行うためには心嚢は原則的に切開する.心外膜を鉗子でつかみ,剪刀で切開する.切開時には心嚢液の貯留の有無を確認する.血性心嚢液があれば心損傷を想定する.

3)心嚢を開放して心拍動がみられなければ,できるだけ早く心マッサージを開始する.心臓の後方に左手掌を挿し入れて,右手掌で心臓全体を前後方向に直接圧

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