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治療

バッグ・バルブ・マスクを用いた人工呼吸,エアウェイの使用法 [■呼吸系の緊急処置]
bag-valve-mask ventilation and insertion of pharyngeal airways
澤野宏隆
(大阪府済生会千里病院・千里救命救急センター長)

治療のポイント

・バッグ・バルブ・マスクを用いた人工呼吸は,心停止や呼吸不全などの重症患者に対して行われる.

・エアウェイは舌根沈下による気道閉塞時の気道確保に用いる.

Aバッグ・バルブ・マスクを用いた人工呼吸

1.概要

 自発呼吸が消失もしくは減弱している場合や,急性呼吸不全で呼吸補助が必要な場合には人工呼吸療法が必要になる.緊急時の人工呼吸として実施される治療手技が,バッグ・バルブ・マスク(BVM:bag-valve-mask)換気である.自己膨張式換気バッグと非再呼吸式バルブで構成される人工呼吸器具にフェイスマスクを取り付けて使用する.換気バッグを圧搾すると患者の鼻腔と口腔から肺に送気され,バッグを戻すと呼気が排出される.非再呼吸式バルブは一方向弁の構造になっているため,患者の呼気はバッグ内に戻らない.酸素化を目的とする場合は,マスクの反対側にリザーババッグを装着する.酸素ガス供給装置につなげて10L/分以上の流量で酸素を流してリザーバが十分拡張していれば,ほぼ100%の酸素濃度での換気が可能である.酸素化に際して呼気終末陽圧(PEEP:positive end-expiratory pressure)が必要な際は,PEEPバルブを取り付けて使用する.

2.適応

 自発呼吸が消失した症例,自発呼吸があっても換気量が不十分な症例,酸素吸入のみでは十分な酸素化が得られない高度の低酸素血症の症例などがBVM換気の適応になる.

3.治療方法

a.準備

 救急外来や病棟など急変時対応を行う場所では人工呼吸を迅速に開始できるようにBVMを常備しておく.

b.手技

 意識障害では舌根が沈下して気道が閉塞していることがあり,頭部後屈顎先挙上法で気道を確保する.枕を用いて患者の頭部を挙上して頸部を軽く後屈させる体位(スニッフィングポジション)にしてもよい.外傷で頸椎保護が必要な患者には下顎挙上法を行う.

 術者

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